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私達の距離
「なぁ」
「なに?」
「俺の部屋着どこ?」
二人で過ごすには少し窮屈なマンションの
ワンルーム。
ふいに立ち上がった彼はごく普通にそんなことを
言い出す。
「えっ。まさかまた泊まって行く気?」
「いいだろ。
今更家に帰るなんてめんどくせぇ。」
「はぁ。」
わざとらしくため息をついてみても、目の前の彼は
知らん顔をしている。
それどころか、私の返答なんて待っているそぶり すらないんだから腹立たしい。
せめて何か言ってやろうと立ち上がった私に背を
向けて、あっけなくバスルームへと歩く。
私とは違う。
筋肉質な男らしい広い背中。
その背中に思わず手を伸ばしてしまいたくなる自分が恥ずかしくなる。
「シャワー浴びるから用意しといてくれ。」
それだけ言い残して、手近にあったバスタオルを
手にとった彼はバスルームへと消えた。
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