第五話 演劇練習

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 でもその表情は長くは続かず、突如苦しげなものに変わる。 「ぐぅっ」  と呻くと共に仰け反るように倒れて行く。  何が起こったのかと思った瞬間、ミヤちゃんのニッコリとした笑顔が見えた。  彼女はカイの制服の後ろ襟を掴んで引き倒している。  身長差があるため、カイは首を絞められた状態になっていたんだろう。  彼は首を押さえて軽く咳き込んでいた。  それにしてもミヤちゃんはどれだけ力があるんだろう。  小さくて可愛らしいミヤちゃんが、二倍ほどもありそうなカイを引き倒した。  見た目はまんま女の子の細腕なのに、どこからそんな力が出てくるんだろう?  不思議に思っていると、ミヤちゃんはカイの襟を掴んだまま口を開く。 「戒くん何やってるのかな? さっさと練習始めよう?」  口調はいつもと変わらなかったけど、その変化の無さが逆に怖い。  だって、平然とカイを引き倒しておいてそれだもん。  普通怖がるって。
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