166人が本棚に入れています
本棚に追加
「実花ちゃんも帰りなよ。もう皆いないよ?」
カイに向けていた笑顔に優しさを加え、私を見たミヤちゃんが言う。
その言葉に「え?」と小さく声を上げ周囲を見回すと、この練習用に借りていた教室には私達三人以外誰もいなかった。
皆早っ!
「はは……うん、そうだね……」
皆の素早さに呆れつつ一応返事をしたものの、カイに視線を向けると私を睨む視線とぶつかる。
仕方ないなぁ……。
「じゃあ屋上で待ってるから、早く終わらせてよね?」
私はため息をつき、そう一言言い残して教室を出た。
去り際に見たミヤちゃんの顔は何故か不満そうだった。
私がカイを待つのが嫌なのかな?
けど、仕方ないでしょう?
後で嫌な思いするの分かっててわざわざ刃向かうわけにもいかないもん。
なんて心の中で言い訳をしつつ、私は自分の鞄だけ持って屋上へ向かった。
屋上の鉄製のドアは重く、力を入れないと簡単には開かない。
最初のコメントを投稿しよう!