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「よいしょっと!」
軽くかけ声を上げて力を込めるとゆっくり開いた。
開いた隙間から涼しい風が入り込み、完全に開くと目の前に橙が広がる。
私は思わずドアの横に鞄を放り出し、フェンスのところまで駆け出した。
「うわぁ……。ここから見る夕日キレー……」
フェンスに上って身を乗り出したくなるほどにその景色は素晴らしかった。
……本当に身を乗り出したりはしないけど……。
遠くに見える山々の間に沈んでいく太陽。
沈む間際に増す光の色が、空だけでなく地上も染めていく。
秋も近付いてきて稲の色も変わってきた。
その色は夕日の橙に違和感無く調和している。
吹き付ける風も真夏ほどの暑さはもう無く、ずいぶんと涼しくなった。
「気持ちいいー……」
私は目を細めてその風情溢れる景色と心地良い風を堪能する。
屋上に来たのはカイに言われて仕方なくだったけど、この景色を見れたのは良かったかもしれない。
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