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「どうして契約するとは思えないんですか?」
その質問には、「昔話になるが」と前置きがあった上で答えがあった。
「……カイにはな、昔慕っていた鬼がいたんだ」
「鬼、ですか?」
頭の中にポンとよく節分のときなんかにつける鬼のお面が出てくる。
私の鬼のイメージなんてそんなもの。
でも、三尾先生の説明では違っていた。
「ああ、白鬼でな。肌も髪も真っ白で、とても美しい顔をした男の鬼だった」
その表情はいつもと同じような無表情だったけど、どこか悲し気な雰囲気があるように見えた。
「カイはそいつのことをナギと呼んでいたな……」
「そのナギという鬼と関係があるんですか?」
黙って聞いていようとも思ったけど、気になってそんな言葉が口をついた。
私の言葉に促されるように、三尾先生は続ける。
「ああ……。そのナギはな、人間の娘と契約していたんだ。仮契約ではなく、ちゃんとした契約を」
その説明に少し驚く。
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