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その辺りを話している最中の三尾先生の目は冷たく細められている。
美しく有りたいという女の執念を嫌悪しているように見えた。
「だが、今ほど技術が発達していない時代だ。それほど効果は無かったようだ」
そう口にした後、また眉が寄せられる。
「そうして娘は年を重ねるごとに少しずつ狂っていったんだ……。ナギはどうにかしようと励ましていたが、逆効果にしかならなかった。そして、最終的に娘は自害した。……ナギの目の前で喉を切り裂いてな」
「っ!」
私は思わず自分の喉を片手で押さえる。
何てことだろう。
愛した相手の目の前でなんて……。
何も出来ずに愛した相手が死ぬのを見ていたナギという人の気持ちはどんなものだったんだろう。
想像は出来ても、きっとその人の苦しみには程遠い。
それでも私は辛くて苦しくて……泣きたい気分になった。
「目の前で愛する人間が自害するのを見たナギは、発狂した」
それだけ愛していたってことなんだろう。
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