第一話 天狗との契約

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 私、本條(ほんじょう) 実花(みか)は昨日この村に引っ越してきた。  普通のサラリーマンだったお父さんが、ある日突然『俺は農家の星になるんだ!』とか訳分かんない事を言った。  何でも、田舎の土地を借りて農業を(いとな)むシステムがあるらしくて、元々自然が好きなお父さんは同僚に進められて二つ返事でOKしてしまったらしい。  ……家族の了承も取らずに……。    だからお母さんは引っ越してきた今でも不満たらたら。  私は小さい頃からお父さんに連れられて海とか山とか行ってたから、お母さんほどは嫌がっていない。  まあ、それでも住み慣れた土地や友達と別れるのは嫌だったけど……。    それにしても流石は田舎。  結構歩いたのに全く人と会わない。  会えたら挨拶しようかな、とか思ってたのに……。  そう思いながら足を進めていくと、やっと一人の人と出合った。  いや、正確には“出合った”と言うより“見つけた”だ。  道の脇の畑で草むしりをしているおばあさん。  私はやっと見つけたこの村の住人に声を掛ける。
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