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「いやあ……妖怪ときたか……」
私は一人歩きながら笑って呟く。
妖怪なんて本当にいるわけない。
でも、いたら面白そうだなって思った。
ただの興味本位。
「あんまり奥まで行かなきゃ大丈夫だよね?」
そう甘く見た私は、山の中に入っていってしまった。
山の中に入ると、夏の熱い日差しが木の葉に遮られて心地よい暖かさになる。
近くには川もあるのか、その水音は清涼を運んでくれる。
「う~ん、気持ちいいなぁ」
私は木漏れ日を受けるように腕を伸ばす。
柔らかになった日差しは、私を飾り立てるかのように包み込んだ。
興味本位で入った山の中だけど、思いがけず気持ちのいい一時を過ごせた。
あまりにも気持ちよくて、私は知らず知らずのうちに奥のほうへと足を進めてしまっていた……。
「ここどこ……?」
同じ種類の木々、いつの間にか変わってしまった地面の色。
舗装されていなくてもちゃんと人が作った道を歩いていたはずなのに、いつの間にか獣道に入っていた。
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