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きっと彼氏と別れた鈴井さんと玲生は正式に付き合い始めたのだろう。
当然だ。
幼馴染みという強固な絆に私が割り込めるはずがない。
わかっていたのに、とっくにあきらめたはずなのに、どうしてこんなに胸が痛むのだろう。
鋭い破片が胸の奥に刺さったかのようにつらく苦しくて、こらえきれない涙が頬を伝う。
「彩希、大丈夫……?」
「ごめん、美優。玲生は鈴井さんと付き合ってるんだよね、なのに私……」
声が震えて言葉が続かない。
「付き合ってないかもしれないでしょ。今から柏崎に確認しよう?」
「ううん、いいの。ごめん、美優。私ずっと自分を誤魔化してたの。はっきり別れを告げられたわけじゃないし、迎えに来てくれるんじゃないかって期待してた……馬鹿だよね」
あきらめると口では言いながらも心の奥底で彼を待つ私がいた。
けれど彼はもうすでに違う道を歩いている。
自分の愚かさと未練がましさがつくづく嫌になる。
私はどれだけ間違えれば気が済むのだろう。
「いい加減、忘れなきゃ。待たなくていいって言われたんだし」
「でも、好きなんでしょ?」
「これ以上叶わない想いを抱えていても仕方ないもの」
絞り出したのは情けない本心。
どんなに想っても気持ちは届かない。
わかっていて想い続けられるほど、私は強くない。
ならば今度こそもう、この想いは捨てるべきだ。
「初恋は実らないって、本当だね」
「彩希……」
「ずっと心配をかけてばかりでごめんね」
親友の目が真っ赤になっていた。
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