2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

6/18
7273人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
『まさか柏崎が来るなんてびっくりしたわ。柏崎は鈴井先輩以外の女子の名前を呼び捨てで呼んだりしなかったから皆も余計に驚いたんじゃない?』 周囲に説明を終えた美優が独り言のように呟く。 『鈴井先輩?』 『柏崎の幼馴染みで、私たちの二歳年上の先輩よ。ここの卒業生なんだけど美人で成績優秀でね、ファンも多かったの。実家は地元では有名な名家らしくて多くの土地を所有されているそうよ』 『そうなんだ……』 『まあ、今後彩希も有名になるだろうけど』 『えっ、なんで?』 『幼馴染み以外の女子をことごとく遠ざけてきた柏崎が、自ら接触してるんだから当然でしょ。毎朝一緒に登校してるし』 確かに通学をともにするようになって、多くの視線を浴びるようになっていた。 美優曰く、それなりに噂になっていたらしい。 それでも表立ってなにかを言われたり悪意を向けられた記憶はない。 『まあ彩希に危害を加えたりは誰もしないだろうから、安心だけど』 『うん、だって友だちだし』 うなずく私に親友が胡乱な目を向ける。 『彩希……文系なのに残念すぎる読解力ね』 『え?』 『なんでもない。とにかくなにかあったら柏崎が全力で守ってくれるわよ。そもそもすでにしっかり手は打ってるだろうし』 ひとり納得している親友に首を傾げたのは記憶に新しい。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!