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「ねえ、今日は温かくていい天気だし、屋上でお弁当食べない?」
十一月初旬にしては温かい晴れた日の昼休み、美優に誘われて屋上に向かった。
マフラーとコートで念のためしっかり防寒をしつつ、屋上のベンチを移動させて向かい合わせになって座る。
屋上は通常立ち入り禁止だが、美優は今年の学祭準備で使用した鍵をこっそり借りたままにしている。
そのため時折私たちは屋上で昼食をとっている。
担任の先生は薄々気付いている様子だが今のところ黙認してくれている。
「柏崎に早く聞き出したいのに、タイミングは合わないし、彩希は乗り気じゃないし」
まったくもう、と親友が頬を膨らます。
「だって確信もないし、また誤解されて迷惑がられたら嫌だもん」
「自分のものかどうか聞くだけでしょ。気にしすぎよ」
美優は肩を竦めてお気に入りの赤い弁当箱の蓋を閉じる。
話しているわりに食べ終わるのが速い。
「まあでも、彩希らしいけどね。特進クラスに行きづらい気持ちはわかるから、手配したの」
「なんの話?」
「もうすぐ来るわよ」
「え?」
……なぜだろう、嫌な予感がする。
親友は口角を上げて、スカートのポケットからスマートフォンを取り出し、なにかを確認している。
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