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「ねえ美優、なんなの?」
一抹の不安を覚えて話しかけたとき、ガチャリとドアが開く音がした。
「まったくこの季節に、なんでわざわざ屋上で昼飯なんだよ?」
苦笑しながら近づいてきたのは多田くんだった。
手には昼食なのか、コンビニの袋を持っている。
「今日はまだ温かいからいいでしょ?」
「ハイハイ。まさか彩希ちゃんが、玲生のファンだとはね、アイツやっぱりモテるなあ」
美優の隣に座った多田くんは面白がるように言って、私に視線を向ける。
長身に短めの髪、切れ長の二重に縁なし眼鏡をかけた多田くんは少し神経質そうな見た目とは裏腹に人当たりがよく、男女問わず人気がある。
多田くんと美優は高校入学時にはすでに付き合っていた。
「ええっと、あのファンとかじゃなくて……美優、まさか多田くんに話したの?」
「成亮は柏崎の親友だし、成亮になら自然に柏崎を呼び出してもらえるでしょ」
あっけらかんと言う親友に目を見張る。
いやいや、趣旨が違ってきてるから!
キーホルダーの確認をするだけでしょ?
心の中で盛大に反論する。
「いや、あの、わざわざ呼び出してもらわなくていいから」
「彩希はそう言うと思ったけど、どうせならぶつかったよしみで友だちになっちゃえばいいじゃない」
「と、友だち?」
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