1. ウサギとタキシード

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低い声で不機嫌そうに言い返しながら、柏崎くんはコンビニの袋からサンドイッチを取り出して食べ始める。 なにを言えばいいかわからず、私は彼が食事する様子を眺めていた。 サンドイッチを持つ指は細く長い。 指の先まで綺麗だなんて本当に羨ましい。 「これ、食べたいの?」 「ち、違いますっ」 慌てて否定する。 「指が綺麗だなと……」 「は?」 「ああ、確かに。玲生は手が大きいし指も長いよな」 納得したように多田くんが言う。 「そんなの初めて言われたけど」 そう言って彼は空いているほうの片手を私に差し出す。 「え?」 「手、貸して」 言うが早いか、彼は私の手を持ち上げ、自身の手のひらと重ね合わせる。 突然触れた大きな手と伝わる高めの体温に鼓動が暴れ出す。 触れた指先が熱くて、震えそうになる。 「俺が大きいんじゃなくて紺野さんが小さいんじゃない? それに紺野さんの指のほうが綺麗だと思うけど」 「柏崎って女子を褒めたりするのね」 親友が驚いたように口にする。 それよりもこの不自然な体勢について指摘してほしい。 なんでいきなり手を合わせているのかわからない。
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