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「あのな、俺をどんな人間だと思ってるんだよ」
「女嫌い?」
人差し指を自身の唇にあてて、端的に返答する美優。
「違う。異様に爪が長くて、ギラギラ飾っている女子の指が苦手なんだよ」
「ええと、その、ありがとう……」
お礼を口にすると彼が相好を崩す。
初めて目にする表情に胸の奥がざわめく。
「どういたしまして?」
悪戯っ子のように片眉を上げる姿に、以前のような剣呑さはない。
明るく変化する表情に最悪だった第一印象が少し薄れていく。
「ねえ、柏崎が持っているキーホルダーって自分で買ったの?」
美優が唐突に柏崎くんに尋ねる。
「キーホルダーって……制バッグにつけてるやつ?」
「そう、今女子に噂の」
「紺野さんのだよ」
そう言って重ねたままだった指を絡められ、ギュッと握られる。
「ええっ?」
突然の告白と動作に戸惑って、思った以上に大きな声が出た。
「あの日、帰宅したら制バッグの外ポケットに入っててさ、身に覚えがないし、誰かが勝手に入れたと思ってたんだ」
「そうそう、俺にいきなり画像を送ってくるから意味がわからなくてさ」
補足説明をしてくれる多田くん。
「美優から後日、彩希ちゃんがウサギのキーホルダーを失くしたって聞いて、もしかしてって思ったんだよ」
その後、多田くんは柏崎くんにその旨を伝え、思い当たったらしい。
柏崎くんが捨てずに保管してくれていて幸いだった。
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