1. ウサギとタキシード

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「美優から彩希ちゃんが俺らのクラスに来るのを渋ってるっていうのも聞いたけどね」 「あの、ええと、それはその……」 美優ったらなんでそんな余計な話までしてるのよ?  多田くんはクスクスと楽しそうに声を漏らす。 「私も成亮から詳細は教えてもらってなかったのよ。まさか柏崎が拾っていて、制バッグにつけてるなんて予想外だったし」 「一向に取りに来ないし、こうでもしたら気づくかと思ったんだよ」 それなら素直に拾ったと伝えてくれればよかったのに、と思う私は身勝手だろうか。 「柏崎が明らかに女子向けのキーホルダーなんかつけてたら噂になるわよ」 首を縦に振る私に視線を向けた彼が、指に力を込める。 離してもらおうと指を動かすが、その度にしっかり絡め直される。 なんで離してくれないの? 「それを狙ってたんだよ」 口元を綻ばせ、私を見つめる彼の姿に胸の奥がくすぐったくなるのはどうしてだろう。 「あの、それじゃウサギを返してもらってもいい?」 おずおず口を開くと、彼が真剣な眼差しを向けてくる。 「あのキーホルダーは誰かから贈られたのか?」 「ううん。自分で買ったけど」 「そっか。じゃ俺がもらう」 「はい?」
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