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『だから私がぶつかったとき、わざとって言ったの?』
『ああ、そういやちゃんと謝ってなかったよな。あのときは悪かった』
申し訳なさそうに眉尻を下げる彼に、首を横に振る。
あのときは少々腹立たしかったけれど、事情を知った今は、彼なりに大変だったんだろうと思う。
『ううん、あの、私も嫌な態度でごめんね』
『いや、お前は悪くないだろ』
『でも、支えてもらったおかげで転ばずにすんだし』
『いや、それ、謝る理由になってないから』
ハハッと声を上げて眦を下げる姿に心がざわめく。
『じゃあ明日から柏崎も一緒に通おう』
親友があっさり了承する。
『俺も便乗する』
明るく言って、多田くんが片手を上げる。
多田くんと美優は同じ小学校出身で家も近所らしい。
なので最寄り駅は当然美優と同じだ。
ちなみに柏崎くんは私のふたつ先の駅が最寄り駅だ。
朝が弱い多田くんはこれまで一本もしくは二本遅い電車を利用していたそうだ。
『ハイハイ、じゃあ四人で通おう。成亮、乗り遅れたら容赦なく置いていくからね』
『起こして、美優』
『甘えすぎ』
そんな調子で四人で通学することになったが、多田くんの朝の弱さはなかなか改善されず、結局美優が譲歩して一本遅めの電車に乗車する日が増えていた。
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