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「大丈夫か?」
少し前のやり取りを思い出していた私は彼の声にハッと我に返る。
「う、うん。平気」
「転びそうになったらちゃんと掴まれよ」
軽く眉間に皺を寄せた彼が少し屈んで、私の顔を覗き込む。
そのとき制バッグにつけられたウサギの女の子のキーホルダーが目に入った。
ちなみに私も、以前ウサギの女の子をつけていた場所に男の子のキーホルダーをつけている。
きちんとつけているか、と時折玲生になぜか確認されるせいもある。
この状態を、目ざとい彼のファンになにか言われるのではと心配だったけれど、意外にも杞憂に終わった。
考えすぎだったのかと安堵していると、先週半ば、彼が私の教室に突然やってきた。
『――彩希』
特進クラスの玲生が私立クラスにやってくる自体が珍しいのに、女子を呼び出して騒ぎにならないはずがない。
そもそも私と友人になったことさえあまり知られていないのだ。
昼休みの教室には女子生徒の悲鳴が飛び交った。
『キャー! 柏崎くん!?』
『なんでうちのクラスに?』
『ヤバイ、カッコよすぎ』
『待って、彩希ってまさか!?』
様々な声を無視して、彼は教室内を見回し、驚きのあまり硬直している私にもう一度呼びかけた。
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