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「今日、成亮は寝坊だってさ」
「そうなの? 美優がまた怒ってそう」
「あー確かに」
他愛ない会話をしながら、電車を降りる。
ふたりでの登校や会話に近頃はずいぶん慣れた。
最初は緊張ばかりだったけれど、会話を積み重ねていくうちに彼の人柄を知るようになった。
一見無表情で近寄りがたく見えるけれど、彼の本質は思いやり深く親切だ。
電車内ではさりげなく空いてる場所に誘導してくれたり、いつも気遣ってくれる。
ちなみに玲生の実家は事業を営んでいるそうだ。
「柏崎先輩、おはようございます! あのっ、今日一緒に帰っていただけませんか?」
学校に到着してすぐ、下駄箱近くで大きな丸い目をした女子生徒に声をかけられた。
ふわりと化粧品の香りが漂う。
ふたりの会話の邪魔にならないよう少し離れようとすると、玲生が私の二の腕を骨ばった指で自身のほうに引っ張った。
「登下校は彩希と一緒にする約束だから」
口元だけ緩めて、きっぱり拒絶する。
「今日だけ、どうしてもだめですか? それと、あの……柏崎先輩と紺野先輩は付き合っているんですか?」
涙目で言い募る女の子に、彼はダメ出しのひと言を添える。
「俺は彩希と帰るって今、言わなかった? そもそも彩希との関係をなんでいちいち説明しなくちゃいけない?」
背筋が凍りそうなほどの冷たい声に、女の子はハッとしたように口を閉じる。
その後、唇を震わせ私をひと睨みして離れて行った。
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