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「……そんな約束、してないよね?」
普段と違う玲生の姿に、言葉を選びつつ小声で尋ねる。
「ほぼ毎日一緒に帰ってるんだし、似たようなものだろ?」
悪びれもせず玲生が答える。
確かに一緒に登校し始めてから、下校をともにする日が増えた。
とはいえ、彼のクラスは授業時間が長く、毎日一緒ではない。
私が委員会や掃除当番、所用で残っているときや玲生の下校時刻が早い日に限られている。
放課後、美優と私が玲生と多田くんに図書室で勉強を教えてもらうときもそうだ。
「美優と多田くんも基本的に四人で登下校してるでしょ。あんな言い方をしたら誤解されるよ」
付き合っているのかと尋ねられたのはもう何度目だろう。
「俺は誤解されても構わないけど?」
それは……付き合っていると誤解されてもいいって意味?
自分勝手な解釈が頭に浮かび、慌ててかき消す。
「……よくないでしょ。今の女の子、知り合いじゃないの?」
「知らない。俺は彩希が隣にいてくれたらいいから」
この人は今、自分がなにを言っているのかわかっているのだろうか?
どうして私を混乱させる言い方ばかりするの?
喉元まで出かかった言葉を必死に呑み込む。
きっとからかわれているだけ、深い意味なんてない。
何度も自分に言い聞かせ、動揺を隠す。
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