2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

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「彩希?」 「もう、冗談ばっかり」 重い空気にしたくなくて、できるだけ軽い口調で告げる。 「本気だけど?」 「え……?」 「これまでも、これからも俺は彩希に嘘は言わない」 強い視線が私を真っすぐ捉える。 「それって……」 彼の指が触れている部分が熱い。 きちんと尋ねたいのに、喉がカラカラに乾いてうまく声が出せない。 「だからもし誰かになにかされたら、すぐに報告しろよ?」 真剣な声にぎこちなくうなずくと、彼は満足そうに目を細めて腕を離す。 それから私の頬にかかる髪をスッと耳にかけて尋ねた。 「教室まで送ろうか?」 玲生の指先が頬をわずかに掠め、ひゅっと息を呑んだ。 「――柏崎、彩希に構いすぎよ」 背後から聞こえた声に思わず振り返ると、険しい表情をした美優といつも通りの柔和な笑顔を浮かべた多田くんがいた。 「お、おはよう。美優、多田くん」 「おはよう、彩希。柏崎、彩希を女除けに利用しないで」 女除け? 美優のひと言が胸に鋭く突き刺さる。 そうか、私は彼にとってそういう存在なのか。 なにかがストンと胸に落ちた。 気づいた現実に、なぜか胸がツキリと痛んで呼吸が苦しくなった。 友人になってそれほど日数も経っていない私を玲生が特別扱いするはずがない。
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