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「は? そんなわけないだろ!」
不機嫌な低音が周囲に大きく響き渡る。
「落ち着け、玲生。美優はそんなつもりで言ったんじゃない。美優も彩希ちゃんが心配なのはわかるけど言い方が悪い。俺の親友を少しは信じてやって」
多田くんがふたりの間に入ってとりなす。
「――彩希」
「……なに?」
「俺は彩希を女除けなんて思ってないから」
「う、うん……」
「榎本、紛らわしい真似をして悪かった。俺はこれから先、全力で彩希を守るつもりだから」
その言葉に不覚にも胸が高鳴った。
「柏崎、私もごめん」
「ハイハイ、これでこの件は終わり。ほら注目されてるし、早く教室に行こう」
多田くんが明るく声をかけ、私たちは各自の教室に向かった。
その日の五時間目は英語だったが、先生の急用で自習だった。
私は美優と机を寄せて課題をこなす。
「ねえ、聞いてもいい?」
スペルを必死に思い出そうと問題文を睨んでいる私に、美優が話しかけてくる。
「ごめん、ちょっと待って。もう少しで思い出せそうな気がするの。これ、昨日美優に聞いた単語だし」
「もしかして問三?」
英語が得意な美優はそう言って、サラサラと私のプリントにスペルを書く。
「あ、そうだ! ありがとう」
「あのね、課題の話じゃないわよ」
「え?」
思わずプリントから目を離して、親友を見る。
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