2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

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「は? そんなわけないだろ!」 不機嫌な低音が周囲に大きく響き渡る。 「落ち着け、玲生。美優はそんなつもりで言ったんじゃない。美優も彩希ちゃんが心配なのはわかるけど言い方が悪い。俺の親友を少しは信じてやって」 多田くんがふたりの間に入ってとりなす。 「――彩希」 「……なに?」 「俺は彩希を女除けなんて思ってないから」 「う、うん……」 「榎本、紛らわしい真似をして悪かった。俺はこれから先、全力で彩希を守るつもりだから」 その言葉に不覚にも胸が高鳴った。 「柏崎、私もごめん」 「ハイハイ、これでこの件は終わり。ほら注目されてるし、早く教室に行こう」 多田くんが明るく声をかけ、私たちは各自の教室に向かった。 その日の五時間目は英語だったが、先生の急用で自習だった。 私は美優と机を寄せて課題をこなす。 「ねえ、聞いてもいい?」 スペルを必死に思い出そうと問題文を睨んでいる私に、美優が話しかけてくる。 「ごめん、ちょっと待って。もう少しで思い出せそうな気がするの。これ、昨日美優に聞いた単語だし」 「もしかして問三?」 英語が得意な美優はそう言って、サラサラと私のプリントにスペルを書く。 「あ、そうだ! ありがとう」 「あのね、課題の話じゃないわよ」 「え?」 思わずプリントから目を離して、親友を見る。
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