2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

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「特別扱いされる理由も自信もないの。自惚れて勘違いだったら恥ずかしくて立ち直れない」 「なんでそんなに弱腰なの? 彩希、今まで付き合った人はいないって言ってたよね? 好きな人もいなかったの?」 「いたといえばいたけど……多分あれは恋じゃなかったと思う」 中学が同じだったひとつ年上の先輩を思い出す。 けれど今思えば、先輩への感情は憧れに近いものだった気がする。 玲生と過ごすときに時折感じる、胸が締めつけられるような気持ちとは似ても似つかない。 「じゃあ、今は?」 「今って……」 「柏崎と接していてなにも感じないの?」 畳みかけるような親友の問いかけに、ひとつ大きな息を吐いた。 「……玲生に触れられると電流が走ったみたいにドキドキして、顔が見たいのに恥ずかしすぎて直視できなくなるの。一緒にいるとなにを話したらいいかわからなくなって素っ気ない言い方しかできない」 ずっと感じていた玲生への想いを正直に告げる。 きっと美優にはなにもかもお見通しなのだろう。 「ほかには? この際だから全部吐き出しちゃいなさいよ」 「ほかの女の子と一緒にいる姿を見たら胸が苦しくなるし、優しくされると泣きたくなる」 「――そっか、彩希は柏崎がすごく好きなのね」 「え?」
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