2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

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『好き』 その単語がストンと胸に落ちた。 好き? 私が、彼を? もう一度復唱する。 じわりと胸に広がる気持ちに戸惑いながらも納得する。 そうか、私、玲生が好きなんだ。 自覚した途端、今までの自分の行動と感情が繋がった気がした。 名前を呼ばれて、なぜ心が揺さぶられたのか。 触れられると、なんでいつも胸が高鳴って落ち着かなくなるのか。 理解したばかりの感情が甘くゆっくりと心の中に染み込む。 「うん……私、玲生が好き」 言葉にすると、さらにその気持ちが強くなる。 「まったく……全然行動しないし、自分の気持ちがわからないのかって心配したわよ」 「ご、ごめん。でも行動って?」 「決まってるじゃない、柏崎に告白するの」 「む、無理!」 思わず大きな声が出て、親友にきつく睨まれる。 「なんでよ? 気持ちを伝えなきゃなにも変わらないでしょ」 「伝えられるわけないじゃない。あんなに完璧でモテる人に」 「あのね、女子に期待を持たせる真似をしたらどうなるかをよく知っている柏崎が、彩希を特別扱いしてるのよ。もっと自分に自信をもつべきじゃない?」 「でも……想いを自覚して、いきなり告白はさすがにできないよ」 あんな完璧な人と付き合える気がしない。 「……柏崎も苦労するわね」 「え?」 「なんでもない。とにかく私も成亮も全力で応援するから頑張って」  親友の温かい応援は嬉しかったが、気持ちを自覚した私は玲生への接し方がわからなくなった。 登下校時は意識してしまい、玲生を直視できない。 話しかけられてもうまく返答できず、普段より素っ気ない口調になってしまう。 想いを自覚する前も恥ずかしさや緊張はあったけれど、ここまでじゃなかった。 こんな調子じゃ嫌われるか怒らせてしまうと思えば思うほど、焦って空回りを繰り返していた
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