2.「俺は彩希がいてくれるだけで十分だ」

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骨ばった指先が微かに唇に触れ、背筋に痺れがはしった。 彼の指はすぐに私の唇から離れたのに、心の中は落ち着く気配がない。 高校生とは思えない色気と何気ない仕草ひとつに、私がどれだけ心を乱されているか彼は知っているのだろうか? 玲生は私の腕からそっと指を離して、問題集の上に置かれた私の手をギュッと握った。 その瞬間、鼓動がひと際大きく跳ねた。 空いたほうの手で彼がブレザーのポケットからスマートフォンを取り出す。 「今日、成亮と榎本は用事があるから先に帰るって」 メッセージを確認したのか、素っ気なく告げられる。 「そう、なの」 もしかしてあのふたりは気を利かせてくれたの? でも今は、ここに居てほしかった。 この状態でふたりきりは心臓が持たない。 「さっきからぼうっとしてるし、やっぱり体調が悪いのか? 少し頬も赤いし」 「ううん、大丈夫」 玲生を意識しすぎたせい、とは言えない。 「悪化したら困るし、今日はもう帰ろう」 私の返答はまるきり無視して、彼は机の上に散らばっている問題集やノートを手早く片付ける。 ふたりの時間が終わるのが残念な気持ちが半分、安堵する気持ちが半分の私は素直に同意する。 制バッグのなかに筆記用具を入れ、隣の椅子にかけていたコートとマフラーを手にする。
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