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骨ばった指先が微かに唇に触れ、背筋に痺れがはしった。
彼の指はすぐに私の唇から離れたのに、心の中は落ち着く気配がない。
高校生とは思えない色気と何気ない仕草ひとつに、私がどれだけ心を乱されているか彼は知っているのだろうか?
玲生は私の腕からそっと指を離して、問題集の上に置かれた私の手をギュッと握った。
その瞬間、鼓動がひと際大きく跳ねた。
空いたほうの手で彼がブレザーのポケットからスマートフォンを取り出す。
「今日、成亮と榎本は用事があるから先に帰るって」
メッセージを確認したのか、素っ気なく告げられる。
「そう、なの」
もしかしてあのふたりは気を利かせてくれたの?
でも今は、ここに居てほしかった。
この状態でふたりきりは心臓が持たない。
「さっきからぼうっとしてるし、やっぱり体調が悪いのか? 少し頬も赤いし」
「ううん、大丈夫」
玲生を意識しすぎたせい、とは言えない。
「悪化したら困るし、今日はもう帰ろう」
私の返答はまるきり無視して、彼は机の上に散らばっている問題集やノートを手早く片付ける。
ふたりの時間が終わるのが残念な気持ちが半分、安堵する気持ちが半分の私は素直に同意する。
制バッグのなかに筆記用具を入れ、隣の椅子にかけていたコートとマフラーを手にする。
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