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「さっきから思ってたんだけど、彩希、セーター着てないのか?」
ブラウスにスカートという私の装いを見た玲生が尋ねる。
彼自身は制カーディガンを着ている。
我が校の制服は基本的に男子も女子もブレザーに白のブラウスにパンツ、スカートとなっている。
ただし、気温や体調にあわせてグレーの制カーディガン、制セーターの着用が可能だ。
ブレザーは容易に洗濯ができないのと動きにくいといった理由で、大半の生徒が普段はセーターかカーディガンを着用している。
「うっかり乾燥機にかけちゃって、縮んで着れなくなったの」
卒業間近の今になって買うのは勿体ないので、我慢しようかと思っていた。
「はあ? なんで言わないんだよ。体調を崩したらどうするんだ。今だって調子悪そうなのに」
明らかに不機嫌な低い声にたじろぐ。
「ええと、それはそうだけど」
「ほらこれ、着ろ」
目の前に差し出されたのは玲生の制セーターだった。
「あ、ありがとう。でももう帰るだけだから、大丈夫」
断った途端、バサッと上からセーターを強制的にかぶらされた。
「ちょ、ちょっと!」
強引に着せられたセーターからは僅かにシトラスの香りがした。
彼が愛用している香水の香りを感じるだけで胸がいっぱいになり、ますます頬が熱くなる。
まるで彼に抱きしめられているみたいで落ち着かない。
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