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3.「彩希は俺の特別だから」
「――それで柏崎にセーターを渡されたってわけ?」
「渡されたっていうか、心配してくれただけよ」
セーターをもらった翌日の昼休み、日誌を書いている私の隣の席で親友が確認してくる。
目ざとい親友は今朝少し遅れて登校してくるなり、セーターに気づいた。
すぐにでも問いただしたそうだったが、私が朝から日直の仕事に追われていたため、説明が今になったのだ。
昼休みに日誌を書きつつ親友に告げると、呆れたように返答された。
「彩希に着てほしくてあげたに決まってるでしょ、あの柏崎よ? なんとも思っていない相手に物をあげたり貸したりしないわよ」
「なんで私の着てるセーターが玲生のだってわかったの?」
サイズの違いがあるとはいえ、制セーターに刺繍されているイニシャルを見たとも思えない。
「成亮に聞いたに決まってるでしょ」
あっさり種明かしをされる。
今朝、セーターを忘れた多田くんが玲生の置き忘れを借りようとしたところ、事の次第を聞いたそうだ。
「それに柏崎が特別扱いしているのは彩希だけだから、聞かなくても彩希が男子サイズのセーターを着てる時点ですぐにピンときたんだけどね」
フフと美優が意味深に口角を上げる。
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