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「今朝も電車に乗った途端、着用しているか確認されたんじゃないの?」
「なんで知ってるの!?」
例のごとく、今朝も美優と私は別々に登校していた。
焦る私に胡乱な目を向けた親友が口を開く。
「普段の柏崎を見ていたらわかるわよ。セーターまでもらったくせに、なんで付き合ってないの?」
「なんでって……」
「柏崎はセーター交換の意味、知ってたんでしょ?」
「知ってたけど、私にくれたのはあくまでも成り行き上、仕方なくだから」
それ以外に理由はないと期待しそうになる自分をもう何度戒めただろう。
「そう思ってるのは彩希だけよ。ああもう、じれったい。さっさと告白すればいいのに」
「無理よ……玲生に好きな人がいるかもしれないじゃない」
口にした途端、心が鉛のように重くなる。
「柏崎がそう言ったの?」
「ううん」
「じゃあ気にしなくていいわよ」
「……美優、もしかしてなにか知ってるの?」
「知ってると言うか、以前成亮に聞いたの」
何事も歯に衣を着せない彼女が言いよどむ姿に心の中がざわつく。
「なにを?」
「柏崎の元彼女の話よ」
美優の言葉がズン、と鋭い刃のように胸に刺さり、鼓動が耳障りな音を立てる。
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