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「おはよう彩希、待たせてごめんね」
改札口近くで待っていると、顎の下で軽く巻かれた焦げ茶色の髪を揺らして、親友が小走りにやってきた。
私より十センチメートルは高い身長に大きな丸い二重の目はお人形のようで、母譲りの若干垂れ目がちの二重の私には羨ましいかぎりだ。
「おはよう、美優。大丈夫よ」
「二度寝しちゃって、本当にごめんね」
目の前で両手を合わせる美優に早口で返答する。
「気にしないで。先週は私が遅れたし」
「ありがとう……ねえ、どうしたの?」
「え?」
「なんだか険しい表情をしているし、なにかあったの?」
さすが親友、鋭い。
「……あったっていうか」
なぜか興味津々な様子で私を見つめる親友に気圧されつつも返事をする。
「告白でもされた?」
「違うわよ。私は美優と違ってモテません」
「その低すぎる自己評価もどうかと思うけど、今はいいわ。それで、なんなの?」
「歩きながら説明するわ」
「ハイハイ」
肩を竦めた親友とともに学校に向かって歩き出す。
通学路は登校中の生徒たちで賑やかな様子を見せている。
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