7398人が本棚に入れています
本棚に追加
「――へえ、柏崎がねえ」
「え、知り合いなの?」
「ちょっと待って。まさか彩希、柏崎を知らないの?」
嘘でしょ、と美優が大きく目を見開く。
「あの柏崎よ? わが高校の、彼氏にしたい男子、三年間第一位の!」
「柏崎くんの名前はさすがに知っているわよ」
「なんだ、びっくりした」
ホッとしたように親友が息を吐く。
「今朝電車で一緒だった男子が、柏崎くんだって知らなかったの」
「それを知らないって言うのよ!」
胡乱な目で見返してくる親友に、今度は私が肩を竦める。
柏崎玲生という名前は入学以来幾度となく耳にした。
学内一のイケメンで成績優秀、しかし決まった恋人はいない。
ほぼ毎日誰かに告白されているなどと華やかな噂が絶えず、近隣の他校生にも大人気で彼を知らない女子生徒はいないとまで言われている。
二葉高校には二葉中学校が隣接しており、美優と美優の彼氏の多田成亮くん、柏崎くんは内部進学生だ。
私は高校からの外部生なので中学時代の柏崎くんを知らないが、今と変わらず注目の的だったそうだ。
柏崎くんと同じクラスはおろか、会話したこともない私は彼の名前と容貌が一致していなかった。
最初のコメントを投稿しよう!