7430人が本棚に入れています
本棚に追加
親友はすぐに自室で私の怪我の手当てをし、手足の汚れを落とすためお風呂に入るよう促す。
入浴後は絆創膏を貼りかえてくれた。
「ついでに私もお風呂に入ってくるわね。部屋でゆっくりしてて」
美優がそう言って自室を出ていく。
美優の部屋は六畳ほどの広さでベッド、書き物机があり、小さな丸い机とクッションがベッドの近くに置かれている。
入浴を済ませた親友が、ホットココアの入ったふたつのマグカップを丸い机の上に置く。
ココアから立ち上る湯気と甘い香りが私の心を落ち着かせてくれた。
「――それで、交差点でなにがあったの? 柏崎に会ったのよね?」
心配そうな表情を浮かべる親友に先ほどの短い出来事を話す。
美優は私の入浴中に、玲生の現在の状況を多田くんに尋ねたという。
「勝手な真似をしてごめん。でも彩希の様子を目の当たりにしたら居ても立っても居られなくて」
申し訳なさそうに項垂れる親友に、私は首を横に振る。
「ううん、いいの。心配してくれてありがとう」
「大学で成亮と柏崎はそれほど顔を合わせていないんらしいんだけど……」
親友が少し言いにくそうな様子で話を続ける。
「柏崎と一緒にいたっていう女性は多分、外見の特徴からして鈴井先輩だと思うわ。鈴井先輩はずいぶん前に恋人と別れて、ふたりはもう連絡も取りあっていないって柏崎から成亮は聞いたそうよ」
淡々と話す親友の声がどこか遠くに聞こえる。
腕を組んで歩くふたりの姿が脳裏から離れない。
最初のコメントを投稿しよう!