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「柏崎は騒がれるのがキライだからね。でも彼女がいないせいもあって、女子からのアプローチが日々すごいみたいよ」
「そうなんだ」
ふと車内での彼の姿を思い出す。
あの不機嫌な態度の理由がわかった気がした。
「でも彩希への態度はちょっと失礼よね。成亮に告げ口しておくわ」
「いいよ、やめて。今後話す機会もないだろうし、関わりたくない」
「この機会に柏崎と仲良くなりたいとか思わないの?」
「だって別に知り合いでもないから」
「相変わらずそういうところはあっさりしてるわね」
呆れたように返答した美優が、私の制バッグに視線を向ける。
「あれ、彩希。ウサギのキーホルダー外したの?」
「外してないよ」
「ついてないわよ」
「嘘!?」
驚いて制バッグの取っ手を確認すると、今朝家を出る前にはついていた、こぶし大の白ウサギのぬいぐるみ風キーホルダーがなくなっていた。
「どこかに落としたんじゃない? 最後に見たのはいつ?」
「ええと、電車に乗る前にはあったと思う……」
「電車内で落としたのかな?」
「そうかも。でも混んでたし、今さら見つからなさそう」
「赤いワンピースとおそろいの耳のリボンが可愛かったよね」
「今度、ペアの黒いタキシードを着た白ウサギの男の子を買おうって思っていたのに」
思わずため息が漏れた。
私が持っていた白ウサギのキーホルダーは、学校の最寄り駅前の雑貨屋で販売していた。
この近辺の学生に人気で、すでに完売となっている。
お気に入りのキーホルダーまで失くすなんて本当に今日はついていない。
「とりあえず駅に問い合わせてみようよ」
美優の声に小さくうなずいて、私は校舎までの道を歩いた。
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