6.七年ごしの告白

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「そうそう、新年会したよね。そう言えば、大阪本社から東京法人戦略部に異動になった同期が今日来るって亜子(あこ)が言ってた」 佳澄が軽く化粧を直しながら言う。 綺麗な卵型の顔に、赤みのある口紅がよく映えている。 ちなみに亜子は、今回の幹事で中目黒支店に勤務している。 「そうなの? 知り合い?」 「うん、同じ大学出身なのよ」 「大阪本社から東京法人戦略部に異動ってすごいね」 「王道の出世コースよね。学生の頃から優秀だったし、当然といえば当然なんだけど」 そう言って佳澄は肩を竦め、身支度を整えていく。 私の会社は全国に支店があるため、同期の数は多い。 全員顔見知りではないが、配属店が近い仲間で誘い合って同期会を定期的に開催している。 いつも二十名ほどが参加していて、幹事は男女ペアの持ち回りだ。 次回は私と同じ目黒支店勤務の加治(かじ)くんが幹事の予定になっている。 佳澄と一緒にロッカールームを出ると、彼女のスマートフォンが着信を告げた。 「あれ、営業部からだわ」 ちょっとごめん、と口にして彼女が応答する。 どうやらお客様から急な問い合わせが来ているらしい。 通話を終えた佳澄が申し訳なさそうに口を開く。
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