6.七年ごしの告白

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「あら柏崎、お疲れ様。ちょうど今、噂をしていたところだったのよ」 私の正面にいる亜子が屈託なく話しかける。 彼に背を向ける体勢で座っていた私の肩がビクリと跳ねた。 「まさか悪口?」 どこか面白がるような口調の穏やかな声に、緊張で背中が強張る。 「違うわよ。彩希、この失礼な男が柏崎よ。柏崎、目黒支店の紺野彩希よ」 きっと別人よ、そんな都合よく再会したりしない。 再び自分に言い聞かせながら、恐る恐る振り返る。 その瞬間、呼吸が止まった気がした。 瞬きも忘れ、ただ目の前の男性を見つめる。 驚くほど整った容貌に薄い灰色のスーツを身に着けた長身の男性は、あの頃よりずいぶん大人びているものの間違いなく玲生だった。 なんで、ここにいるの? 無理やり閉じ込めた記憶と想いがあふれ出しそうになり、咄嗟にうつむく。 「――紺野さん?」 呼ばれた名字に胸が震える。 なにか返事をしなくてはいけないのに、喉が詰まってうまく声が出ない。 うつむいたまま反応できずにいる私は、なんて情けないんだろう。 こんなの社会人として失格だ。 「あ、玲生! 遅かったな」 座敷の奥のほうから、彼を呼ぶ賑やかな声が響く。 「電車に乗り遅れたんだ、悪かった。会費は誰に支払えばいい?」 男性の同期たちと会話する横顔や身体つきはあの頃よりずいぶん引き締まっていて、時間の経過を否応なく感じてしまう。 ほかの同期に呼ばれた玲生はそのまま奥の座卓に歩いて行く。 その間、玲生は一度も私に視線を向けなかった。
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