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キーホルダーを紛失した日から半月ほどが経ち、季節はすっかり冬に移り変わっていた。
未だにキーホルダーは見つからず、駅にも届け出がなく、もうほぼあきらめている。
ちなみに柏崎くんの姿はあの日以来見ていない。
「ねえ、聞いた? 柏崎くんにとうとう彼女ができたらしいって!」
クラスメイトの大井里奈ちゃんが登校してくるなり、興奮して話す。
美優も校内の情報に詳しいが、里奈ちゃんはさらにその上を行く。
「らしいって、なにその曖昧な情報」
私の前の席に座る美優が里奈ちゃんに問いかける。
「誰も本人に確認してないからよ」
なにそれ、と呆れたように美優が手を振る。
「柏崎くんの制バッグに白ウサギのキーホルダーがついてたらしいのよ」
「キーホルダーなんて、誰でもつけるでしょ。白ウサギなら以前彩希もつけてたわよ」
「そうなの?」
里奈ちゃんに聞かれて、うなずく。
「うん、赤色のワンピースを着た白ウサギの女の子」
「えっ、それ、柏崎くんのと一緒よ」
「嘘でしょ? なんで柏崎がそんなのつけてるのよ」
「わからないから噂になってるんじゃない! あれ彩希ちゃん、今はつけていないの?」
里奈ちゃんが机の横にかけてある私の制バッグを見て尋ねる。
「ちょっと前に失くしちゃって」
「柏崎くんとお揃いだったのに残念だね」
「いや、全然……」
心底残念そうに話す里奈ちゃんに躊躇いがちに返答する。
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