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1. ウサギとタキシード
「――綺麗になったね」
七年ぶりに再会した彼が色香のこもった眼差しで真っすぐ私を見据える。
「約束通り、彩希を迎えに来た」
なんで、今になって現れるの?
心の奥底に閉じ込めた苦い記憶がじわじわと蘇る。
……あなたが想う人は私じゃないでしょう?
骨ばった長い指が私の頬に触れ、伝わる体温が鼓動をかき乱す。
「もう絶対に離さないから覚悟して」
どこまでも自分勝手な言い分。
端正な面差しに浮かぶ余裕が腹立たしい。
私はあなたのものにはならない。
――もう二度と、あなたに恋なんてしない。
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