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「池野さん、モカにちょっかい出すの止めて下さい。何スーツなんか着てモカを誘惑しようとしてるんですか」
世蘿秧の手から糢袈の眼鏡を奪い取った弥生が二人を強引に引き離す。
弥生は完全に本来の主旨を忘れてしまっている。
ここまで分かりやすい反応を示してくる弥生に世蘿秧は心の中だけで大爆笑しているが、表面上はそんな感情を微塵たりとも露にせず、あくまでも澄ました態度を維持させる。
「確か永倉さんはおれにスーツをプレゼントしてくれると言いましたよね? あれは嘘だったんですか?」
世蘿秧が飄々とした物言いで弥生の心を抉ってくる。痛いところをグサリと刺された弥生は言葉を詰まらすも、すぐに毅然とした振る舞いで言い返す。
「嘘ではないですけど、わざわざモカの好みに合わせる必要はないでしょう」
「そんなのは個人の自由だと思いますけど。ねえ、松崎さん」
糢袈に同意を求める世蘿秧ではあるが、糢袈は困惑して狼狽えているだけだ。
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