番外編。①

14/17
654人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
         「あの三人は、さっきから一体何を張り合っているんですかね?」  半ば呆れ気味で話す飛典の隣で冬嗣は仏頂面をしている。 「帝も弥生もイケメンなのは認めるけどさ、おれも負けてはいないと思うんだよねん」  全身鏡の前で冬嗣は自分自身のルックスを自画自賛している。  弥生、帝、世蘿秧と並んで立ったとしても、冬嗣はけっして見劣りしないほど容姿端麗なのだ。 「モッカコーヒー、おれのスーツ姿も見てよん」  スーツを試着した冬嗣が人懐っこい笑顔で糢袈へと飛び付いてきた。  頭の天辺から足の爪先まで食い入るように冬嗣のスーツ姿を見た糢袈は率直な感想を述べる。 「冬嗣も最高に格好良い」 「でしょうん」  糢袈に褒められてご満悦の様子なのか、冬嗣は鼻唄を歌っている。  皆がスーツを試着して盛り上がっているなか、飛典はただ一人、その輪の中には入らずに黙って傍観している。  皆が自分のスーツ姿を糢袈に一番褒めてもらいたいと競いあっているのは、何とも形容しがたい奇妙な光景だなと飛典は思った。       
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!