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「あの三人は、さっきから一体何を張り合っているんですかね?」
半ば呆れ気味で話す飛典の隣で冬嗣は仏頂面をしている。
「帝も弥生もイケメンなのは認めるけどさ、おれも負けてはいないと思うんだよねん」
全身鏡の前で冬嗣は自分自身のルックスを自画自賛している。
弥生、帝、世蘿秧と並んで立ったとしても、冬嗣はけっして見劣りしないほど容姿端麗なのだ。
「モッカコーヒー、おれのスーツ姿も見てよん」
スーツを試着した冬嗣が人懐っこい笑顔で糢袈へと飛び付いてきた。
頭の天辺から足の爪先まで食い入るように冬嗣のスーツ姿を見た糢袈は率直な感想を述べる。
「冬嗣も最高に格好良い」
「でしょうん」
糢袈に褒められてご満悦の様子なのか、冬嗣は鼻唄を歌っている。
皆がスーツを試着して盛り上がっているなか、飛典はただ一人、その輪の中には入らずに黙って傍観している。
皆が自分のスーツ姿を糢袈に一番褒めてもらいたいと競いあっているのは、何とも形容しがたい奇妙な光景だなと飛典は思った。
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