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でも世蘿秧が楽しそうに笑っているのを見ていたら、飛典は自分もスーツを試着してみたくなった。
「俺もスーツを試着する」
しかし飛典は糢袈ではなく、世蘿秧からの批評を求めた。
飛典も目鼻立ちが良く、芸能人顔負けのなかなかの好青年なのだ。
「世蘿秧、このスーツどうかな?」
入社式の日に着用していくスーツを、飛典と世蘿秧は今日みたいに和気あいあいと談笑しながら一緒にスーツを買いに出かけた。
「うん、とても良く似合ってるよ」
そうして飛典と世蘿秧はあの時と全く同じ会話を織り成す。
飛典も世蘿秧も独身で現在は恋人もいないが、それなりに恋愛経験があり、女の身体もそれなりに味わった。
けれども今、突然、新たなパートナーとして女を紹介される事などお互いに望んではいない。
何故か女にはスーツを選ばせたくはないし、選んでほしくもない。
親友がスーツを買う為の同行者はこれからもずっと己だけでありたいと、飛典と世蘿秧はひたすら願い続けているのだ。
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