番外編。②

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          まだ入社したばかりの頃の賢登は新しい環境のなかで仕事に慣れていくのに精一杯だった。  同期の弥生は仕事覚えも早く、真面目で優秀な新入社員が入ってきたなと、上司から一目置かれる存在だった。  しかも弥生はそんな自分をけっして自慢する事はなく、他の同僚達を見下したりする事もなく、まさに絵に描いたような爽やかな好青年だ。  賢登は弥生の人柄に好感を持つと同時に興味も湧き、積極的に弥生に話しかけるようになった。その結果、同じ部署という事もあり、賢登と弥生は社内ではよく話す間柄になった。  賢登は弥生と親しくなれた事を素直に嬉しく思い、そして誇らしかった。  賢登の教育係りを任された康朔は三十代前半にしては若々しく見え、そしてどことなく落ち着いた物腰をしていた。  教え方も丁寧で分かりやすく、指導力のある上司が教育係りに付いてくれて良かったと、賢登も康朔に信頼を寄せるようになった。  そんな僅かばかりの気の緩みが生じたからなのかどうかは定かではないが、賢登は大切な書類の入力ミスをしてしまったのだ。       
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