第1章

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          糢袈も身体を起こすと、ノートとボールペンを取り出した。  弥生も自分の日記帳にこれから糢袈と性的行為をするとメモを残す。 「モカ、書けた?」 「まだ……、あともう少し……」  いつもより書くペースが遅い事に不思議に思いつつも、弥生は糢袈の準備が整うまで待つが、すぐに同じ台詞を投げかける。 「モカ、書き終わった?」 「まだ……、パソコンにメール送ってないから……」  糢袈は弥生からは見えないように膝の上にノートを広げている。ボールペンを持つ手は落ち着きがなくソワソワとしており、スマートフォンを操作する指先の動きはどことなく無造作でぎこちない。  その不自然な素振りに弥生は待つ事を止めて、糢袈の身体を背後から優しく抱きしめた。 「モカの嘘つき。本当はもうとっくに書き終わっていて、メール送信も終わっているくせに」  あっさりと見抜かれてしまい、糢袈は全身を硬直させた。  自ら情交に誘ったとはいえ、先程の弥生の盲目的な勢いを目の当たりにした糢袈は多少なりとも緊張してしまい、若干、踏み留まってしまったのだ。       
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