最終章

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最終章

 美夜は、恭一郎から話は聞いても自分から動く事はしなかった。 美夜は、ATコンサルタントという会社を設立したジェシカ・K・ローランドが恭介の母親だと知って驚いた。 彼女ならよく知っていて厳しい事も言うが決して無茶な人ではない。 女性でありながらある大きな会社の副社長まで務めて今はコンサルタント業務を主とした会社で役員として働いている。 責任感と大局を見る事を美夜に教えてくれた人だからよほどの覚悟を持って過去に自分の責任の元で選択したのだろうと思うから、いくら恭介と結婚するからと言って口を出すべきでないと美夜は思った。 結婚式の準備は大変だった。 引き出物や招待状などの細かい決め事、ここで大活躍だったのは一条沙耶香で「私こういうの得意です。」と言って手伝ってくれた。 ドレスやブーケーも一条沙耶香が今の流行のドレスを選んでくれたりして「ホント神田先輩はこういうのに興味ないのですね。」と美夜が式にこだわりが無い事を不思議がる。 「そうね・・式はしないつもりだったし。うちの場合は籍だけ入れればいいと思っていたから。」 「そうだったんですね。」 どんな家庭にもその事情があるという事だ。 今回の結婚式は、鏡ホールディングスとして必要な式と披露宴だという事で資金は鏡恭一郎が全額出してくれた。 美夜の両親は、式には出席するだけで母は弟の将来にいい影響があると思ったのか出席を了承したというから現金なものだ。 「一条家は、政略結婚ありきで兄なんてあーだし結婚に憧れがあっても恋愛結婚はかなり条件がきついの。でも最近好きな人が出来て・・。」 「んっ?誰?」 「今は良い感じなんですよ~。ちゃんとお付き合いできたら応援お願いしますね。」 一条沙耶香は「恋っていいですよね。」なんて事を言いながら好きな人を追いかけるのに必死なようだった。 「ええ、人を愛する事も愛される事も素敵だけど話し合える関係でいないとダメだといつも思うわ。」 「そうですね。私も相手の話を聞ける女性になりたい。」 色々あったけど、美夜にとって沙耶香は可愛い部下であり妹のような存在にもなりつつあった。 美夜にとって明日は、大きな山場の一つになりそうな事がある。 顔合わせ・・美夜と恭介と鏡夫妻との会食だが本来は神田家も来るはずだったが美夜の母は出席を拒否したから鏡夫妻と顔合わせのみになった。 「美夜・・行こうか。」 「ええ。」 少し固い表情の恭介の手を握り彼を見上げて美夜は笑顔で答えた。
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