第一章

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第一章

 本当にホストクラブは初体験なのだろうキョロキョロと周囲を見渡している姿が少し可愛く感じたのはたまに見る彼女とは違うからだ。 いつもキリッとして颯爽と歩く姿の姿勢が綺麗だなと見かける事があった。 「俺はキョウ。お嬢様は?」 俺はあまり渡さない名刺を彼女に差し出した。 彼女はビジネスのお手本のような仕草で自分の名刺を出し交換する。 「主任さんか凄いな美夜さん。綺麗な名前だな。」 「ありがとうございます。あの・・初めて来たのですがここにあるお金を使い切りたいんです。」 そう言って彼女はバックから帯付き300万を裸のままテーブルに置く。 「持っていたくないお金なんで・・自分のお金ではないですから。」 「話を聞こうか?まずそのお金はバックに一度しまって。」 そう言って彼女のバックにとりあえず現金をしまうように促すとそうですよねと彼女は我に返って現金をバックにしまう。 彼女は、主任といえど普通の会社員だ一晩で300万も使うなんて何か訳アリでしかない。 「ホストクラブは女性が仕事や生活のストレスを発散する場所で散財するだけの場所ではないんだ。だから話せよ。」 俺は、ナンバーワンだった俺らしくない事を言ってる。ヨルなんかが聞いたらゲラゲラ笑うに決まっている。 遊び慣れてる子が大金を使うならいい、親の金で遊ぶのもま~それは親とその子とも問題だ。 とりあえずシャンパンを開けて乾杯することになった。 「キョウさんって綺麗な顔してるんですね。」 少し飲んで緊張が緩んだ彼女が俺の顔をマジマジと見ながら言う。 他の女には嫌ってほど言われる事だが彼女に言われると照れる。 「男に綺麗な顔って・・母親に似たんだ。」 俺は母親に似ているとよく親父が言うからそうなんだろう。 「お母さんすごく美人なんですね。」 「美人だな。性格は最悪だがな!」 俺の母は確かに美人だが性格は鬼のように悪いと思っている。 そんな母でも「愛してるんだ~。」と懲りずに言う親父はどうかしてると思ってる。 俺は、何でも無い会話をしながら今日の昼の出来事を思い出していた。 本来は、喫煙室で吸えばいいのかもしれないが会社での俺のキャラにタバコは合わないと思って携帯灰皿を持って今日も人目につかない非常階段で一服していた時に彼女を目撃してしまった。 それまでも隣の会社だというのもあるが、彼女の姿は、何度か見た事があったが印象としては颯爽としたキャリアウーマン。 隙のない綺麗な女だなと思って見ていたが、彼女には彼らしき人物がいるのも同時に知っていたからたまに見る「高潔な花」という印象だった。 「普通はさ、恋人が成績に困っていたら援護するのが普通じゃないのか?なのに君は、自分の仕事を優先しただろう?」 聞いた事がある男の声だ。 「ええ、責任がある仕事だから当然じゃない?」 「そういう所だよ、俺はもう君と一緒に将来を考える事はできないよ。」 苛立った声で男は遠回しに彼女に別れを切り出している。 話を整理すると、彼が成績に苦労している時に彼女は自分の仕事で責任を果たしていたそれが気に入らないと彼が言ってるようだが。 俺はチラッと二人を覗き見した。 男は同じ会社の営業の男で元々は彼女の同僚だった奴だ。 社内での評判は、悪くはないが野心的で高圧的な印象のある男で確かに何度か見た彼女の彼なのは確かだった。 「とにかく俺は君とはこれ以上付き合えない、結婚の話も無しだ。これは君から預かっていた結婚資金とプラスして用意したから 受け取ってくれ。」 茶色い封筒を押し付けて彼女の答えも聞かずに男は去っていく、彼女は封筒の中身をみて驚いた顔をしたがその封筒を彼に返そうと彼を追った。 その彼女を彼は振り払い「迷惑だ。」と言った。 外から見たら彼女が彼に縋りついているように見えるのは偶然か? さっきまでは人目がつかない場所だったが既にそうではない場所で奴の行動は今まで付き合っていて結婚まで考えた相手にする態度ではないと俺は思いながら見ていた。
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