第五章

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「何を顔を赤くしてるの?」 「だって昨日シャワー。」 「ああ。」 昨日の事後にあまり覚えていなかったが彼と一緒にシャワーした事を思い出して顔が熱くなる。 「覚えているのはシャワーだけなの?」 起き抜けの彼は、意地悪な顔をして覚えてないなら思い出してみる?と言い出したから美夜は「覚えてるわ・・演技がいらない事。」と言うと残念と言いながら抱き寄せてくれた。 こんな甘美な朝は、経み験した事がなく思い出したくも無いが以前の経験は何だったのかと思う。 朝を一緒に迎えても会話は「ご飯は?」が大半で何かを要求される事ばかりだった。 「美夜休日明けに必要な物って取りに行かなくていいの?」 「あ!パソコンかな後は大事な物はバックに入ってるから。」 通帳やハンコなど貴重品はすでにバックの中にあるし大事なのはパソコンくらいだった。 「後で取りに行こうか、解約の手続きもしないといけないだろう?」 「うん。」 部屋の解約は電話でして家具は業者に処分を依頼する。 その前に必要な物を取りに二人でハイツに向かい部屋に入ると部屋がありえないくらいに荒らされていた。 「無くなった物はない?」 「うん。パソコンもある。」 「ここの鍵かかっていたよね。窓ガラスも割れていない。」 窓ガラスが割れていれば空き巣かもしれないが異常はないし部屋に来た時には玄関の鍵はかかっていたから考えられるのは鍵を持つ人物だ。 荒らされているのは引き出しとクローゼットの中で貴金属にお金をかけているわけではないから手つかずだったが一つだけ無くなっている物があった。 「時計がない。」 「時計?」 自分へのご褒美で買った少し高いかと思ったけど買った時計で限定品だった。 「2年前に買った時計なんだけど・・大きな契約を取ってボーナスが良かったから自分の為に買ったの。」 買ったはいいが勿体なくて身につけるのは大きな契約の時や大事な時だけだったから無傷で新品同様だった。 「金子は、ここの鍵を持っていたの?」 「持ってないと思う。」 とりあえず警察を呼び現場検証をしてもらい被害届を出す事にした。 彼女が部屋にいたらどうなっていたかと考えると背筋が冷たくなる。 必要な物をまとめて部屋を出る頃には日が傾いていたから一緒に食事に行き軽く食べてからマンションに戻った。 おろらく犯人は、金子だとキョウは考えていた、美夜がすでに持ち出していた通帳を探していたのかもしれない。 時計は質屋ですでに換金しているだろうと警察も言っていたが保証書の類も一緒に持って行ってたから探しようがない。 美夜のスマホにその時計を身につけた写真が数枚あったからそれを警察に提出したがおそらく見つからないだろう。 明日から仕事が始まるが美夜の周囲が心配だが今は見守るしかない。 「俺は、帰るけど美夜何かあれば連絡して。」 「うん。」 美夜にキスをしてマンションを出て自分のマンションへ帰るが本当は側にいてやりたかった。 数日前まで住んでいた部屋が荒らされたのだから怖いだろうとは思ったが今は、自分の正体を明かすわけにはいかない。 陰謀がすべて明らかになるまでは絶対に知られるわけにはいかなかった。
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