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第六章
休み明けのオフィスは忙しい。
美夜は周囲の噂話には耳を傾けない主義を貫いていた。
今まで、外資系の会社と契約を何回も成功させてきた事を上層部は、評価し新しい部署を作ってはどうかと話が持ち上がっていると聞いていたが、そんな話も聞き流し今日も新しい企画を狙いを定めた企業にプレゼンに行く為に資料を作成していた。
「主任、部長がお呼びです。」
「わかったわ。会議室かしら?」
美夜は、先日の契約に不備でもあったのかと書類を持って会議室へ向かう事にした。
女性社員は、美夜には好意的であったが男性社員はそうではない。
主任になってからそれは美夜にはわかるくらい嫌がらせをしてくる男もいた。
しかし、なんとなく今日は、男性社員達が静かだそれがまた美夜には不気味に感じていた。
会議室にノックをして入るとそこには営業部長とその隣には課長の岩見が勝ち誇った顔をして立っていた。
「この間は、ご苦労様。社長も喜んでいたよ。」
部長は、ねぎらいの言葉を美夜にかけて特に悪意は感じられなかった。
「出来る事をしたまでです。」
そう答えるとフンっと岩見は小声で「嫌味な女だ。」と言ったが部長には聞こえていないのかスルーされた。
「ここに呼んだのは、この件について話が聞きたかったからだよ。」
そう言ってSNSに流れたキョウとの写真を拡大したものを見せて説明を求めてきた。
何をどう答えようかと考えていたら横から「僕が答えますよ。神田は、ホストに散財してその金を元婚約者に無心していると以前いた彼女の元婚約者が言ってました。今までも毎月彼女にお金を渡して貯蓄していたみたいですが彼女は、返金もせず逆に彼に慰謝料を請求しその日にホストに会いに行ったようです。」
真実ではない事を確認を取りましたと言う課長である岩見が、いったい何がしたいのか美夜には理解できない。
「岩見は、こう言うが本当なのか?」
部長が真実なのかどうかを聞いてきたから答えようとするとまた岩見が「真実ですよ・僕が嘘を言っても利はないですから。」
と美夜の言葉を遮るように言った。
「岩見課長には聞いていないよ。どうなんだね神田主任。」
「岩見課長が言った内容はまったく違います。確かに元彼と別れの後でそのクラブに初めて行きましたが、その一緒に写っている男性は現在はホストではないです。それに、課長が誰から何を聞いたのか解りませんが私の私情に口出す権利は無いですよね、ホストクラブの決済は自分のカードを使いましたが
何か問題がありますか?」
無理にでも美夜が夜遊びをして元婚約者に振られただけでなくお金にも汚いという話にしたいようだった。
「何か証拠はあるか?」
そう部長に言われてスマホからカードの使用明細を見せる事にしそれを確認した部長が岩見に向き直り。
「確かに店には、行ったようだが2回だ。その前は無いようだ。明細を見るかぎり堅実な生活だと思うよ。」
美夜は、必要最低限の買い物しかしないしスーパーでの買い物で自炊しているのも解る。
「金子は、君に脅されて300万も渡したと言ったぞ。」
美夜が大きな溜息をついてから「私が彼に渡して貯蓄していた同額を返金してもらったのですが?でも彼は、部屋の外で私を待ち伏せしてそのお金を返せと言ってきたので・・。」
部長は岩見に「だそうだ!金子をこの会社に戻す話は無いと思って欲しい。岩見課長君が聞いている話と彼女との話が乖離しすぎて
いる。」
なんとなく美夜は、岩見が何がしたいか理解できた。
岩見は、金子を戻して自分を排除したいと考えていたのだろう。
「しかし部長!金子は、一条沙耶香さんと婚約していますよ。今後の事を考えると一条家の力添えがあれば。」
あーそういう事かと美夜は思った。
金子を戻すにあたって長年付き合っていた元彼女である自分がいるのが好ましくないのと金子が、自分と別れた理由は一条沙耶香さんと付き合っていたからだと理解できた。
キョウと付き合っていなければそれなりに辛かったかも知れないが、彼がいるから過去の話だと割り切って話が出来た。
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