第六章

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自分の席に戻り定時まで仕事をして退社時間になった時に、美夜も退勤するのかと思ったが、残業だと報告してきたから逆に俺は急いで自分のマンションへ帰り着替える。 会社にいる俺は、俺ではなくホストのキョウも俺であって俺ではない。 彼女に会う時の俺だけが本当の自分だと思う。 黒髪にカラコンは念の為にそのままだが服装はカジュアルな服に着替え車で彼女を迎えに行く事にした。 近くのコインパーキングで待っていると、メッセージを送るともうすぐ終わると返事が来たのに、思ったより時間がかかっているのが心配になって会社の方へ歩いて行くと美夜は宇佐美に話しかけられていた。 「そう言う事ですので、申し訳ないですがお断りします。」 と何かを断って美夜は、彼の側から離れて歩き出した。 「美夜?」と俺が声をかけると嬉しそうな顔をして「キョウ。」と答えてくれた。 車に戻ってすぐに美夜に「何かあった?」と聞くと宇佐美が声をかけてきたという話をし 彼女は、宇佐美が食事に行かないかと誘ってきたのを「恋人がいますから。」と断ったみたいだ。 「しつこくされなかったのか?大丈夫か?」 と俺が聞くと彼女は「今日の課長に比べたら何でもないわ。」と言うから昼間あった話を詳しく聞く事にした。 一緒に美夜のマンションへ行って軽く食事をしながら今日あった話を聞き、予想の斜め上をいく荒井産業の課長にあきれるばかりだったが部長は、なかなか食えない男かもしれないと思う。 「今日、声をかけてきた人は隣の会社の営業のエリートなんだけど、何度か顔を見たくらいで話したのは初めてだったの。なのに急に 金子と別れたのなら良かったとか言い出して食事に行かないかと言われたのよ。」 「俺の彼女は、モテるみたいだから心配だな。」 美夜は「キョウが言うと嫌味だよ。あの人は営業の情報が欲しいだけじゃないかな?」と女として誘ってきたわけじゃないと言うが俺は知っている、宇佐美は仕事の情報もだろうけど美夜を女として見ている。 「美夜は、自分を解ってないね。俺をこんなに夢中にさせているのに気がつかないのかな?俺はかなり独占欲が強いからね・・あの男には気をつけるんだよ。」 時間も遅いから帰らないといけないが俺は美夜の手を引き引き寄せると彼女の唇に自分の唇を重ねて舌を絡めて深いキスをする。 彼女の細い腕が俺の背中に回り抱き合う形でキスを続けると、このまま押し倒したい気分になるが、さすがに明日も仕事だから後ろ髪を引かれる思いで唇を離して少しだけ彼女の温もりを堪能してから今日は帰る事に。 美夜の会社での動きと金子の言動と宇佐美の行動を自分のマンションに帰ってから整理してみる事にした。
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