第六章

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美夜にとっても恭介にとっても不気味なのは宇佐美だった。 金子に関しては「クズ男」だという事以外なにものでもなく、その金子と繋がりが深いのが荒井産業の営業課長だ。 今日の彼女との会話の中で「部長はこれから荒れるって言ってたの。」という話も聞き流す事は出来ない。 荒井産業の株主から株を密かに買っている宇佐美の動きを示唆してなのか、単純に自分の部下の事だけなのかまったく読めない。 金子は、おそらく美夜と付き合う前から金使いが荒かったのか、考えすぎかも知れないが宇佐美が自分の兄を使い金子をギャンブルに溺れさせて、堅実な美夜から金持ちの一条に 乗り変え二人が、別れるように仕向けたという可能性も捨てきれない。 実際に自分に金の手持ちが無かったから美夜に返金した金は一条が用意した金だった。 その金を返して欲しいとマンションに押しかけてきて俺が、その場で同額を送金したのにも関わらず一条に返済していない。 美夜の部屋を荒らして、金目の物を盗み何かを家探ししていたのを考えると犯人は、金子の可能性が最も高い。 それは、今日のあの二人の会話で確信に変わった。 自分の口座を美夜に預けていたが、その金を彼女が勝手に自分の口座に移し替えたと言っていた事から彼女名義の口座を探していたと考える方が自然だ。 「鍵を勝手に複製していたんだろうな。」 そうなるとかなり前から美夜と別れる以前から鍵を複製していたという事になる。 美夜が言うには彼とは、金を手渡す時以外は半年ほど会っていなかったらしい。 その後食事に行く事とか恋人らしい事もしていなかったと言う。腹立たしいから考えたくないが二人が長い時間一緒にいた時に複製したのだろう。 半年以上前から、美夜と別れる準備をしていたと言う事だとすると美夜が、主任になる前からか。 半年以上前と考えるとたしか親父がアイツに出した試験の締め切り期日の前後と言う事になる。 アイツが何処にどれだけ営業をかけていたかなんて興味も無かったから俺にはその情報がない。 「聞くしかないのか・・。」 俺は、一人だけ金子の営業先や成績を教えてくれそうな人物を思い出すしかし・・会社で聞くのは危険だ。 「面倒だけど仕方ない。」 俺は、明日の夕方に食事に行かないかとメッセージを入れ気持ち悪い即レスにゲンナリしながらも必要な事だと割り切る事にした。 鏡ホールディングス社長に聞くしか無い。
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