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第七章
「そんな約束と違うじゃないですか?」
「俺もそれなりに動いてはみたんだ。」
金子直樹は、元上司の岩見と一緒に岩見の愛人の店「ルージュ」に来ていた。
会話が不穏な空気になってきた頃にママの大林 綾乃が和服姿で宥めるようにその場にいたホステスと変わった。
「いい男が二人でなぁに?女の子達がビックリしてしまうでしょ?」
岩見の横に座り嫋やかな体で彼の太ももに手を置くと鼻の下を伸ばした岩見の機嫌は上機嫌に変わる。
「ママは、今日も綺麗だね。それにこの間のブレスレットも似合っているね。」
ママの細い腕には、岩見が贈ったダイヤのブレスレットがキラキラと輝いていた。
「ありがとう。一番のお気に入りだからずっとつけているのよ。」
岩見に少しもたれ掛るようにしてママはブレスレットを岩見に見せる。
「気に入ったのなら良かったよ。」
「金子さんご結婚されるそうね。一条のお嬢様って聞いていますけど逆玉ね。」
「ええ、婚約までは漕ぎつけたんですけど。色々とね。」
金子は、目の前にあるグラスを空にしたらつかさずママは、新しく水割りを手際よく作ると「はいどうぞ。」とコースターの上に置く。
「彼をうちの会社に戻したいんだよ。邪魔な女が一人いてねその女を排除できたら戻せるんだが・・。」
「邪魔な女ですか?」
「ああ、金子の元カノなんだけど今女のくせに主任なんだが上手く排除できなくてね。」
「ああ、この間私に聞いてきた写真の?」
「そうだよ。役員に気に入られているのか部長まであの女の味方なんだ。ありえない。」
「あの部長が彼女の味方?」
金子は、営業部長の性格も能力も知っているあの部長が、神田美夜の味方をしているというのは初耳だった。
「どうやって取り入ったんだ?」
金子がそう言うと「体を使ったんじゃないのか?ホストクラブに通う女なんだからさ。」と岩見はゲスい顔をして言った。
「体を使う?あの女はマグロですよ!感じる事もないし不感症かなんかですね。」
金子がそう言うと「お前が下手なんじゃないのか?」と岩見がからかうように言った。
「何を、違いますよ沙耶香なんて・・。」
一条沙耶香は、お嬢様だが奔放な女だった。
自分から服を脱いで美夜とは違って自分から快楽を求めるタイプの女で一晩で何度も男を求めるような女だ。
だから金子は自分が下手ではなく美夜に問題があると思っている。
それに以前付き合っていた女も美夜に比べたら自分から誘ってくる女だった・・美夜と付き合う前に仕事に役に立たないと思って別れた女の事を思い出し気分が悪くなった。
その女は、自分と別れてすぐに遺書も書かずに入水自殺をしたと後で聞かされたが、金子は自分のせいではないと思っていた。
その女の名前は、橋田 葵。
大学時代に付き合ったが彼女は、普通のカフェの店員で可愛いと思って告白して付き合った。金欠だと言うと財布に黙って金を入れてくれるような女だったが、彼女には学歴が無いのと兄がいるらしいが兄とは疎遠だと言うから家庭環境も複雑そうだった。
いい女だとは、思っていたが就職して少ししてから葵は、仕事の役に立たないが仕事が出来る美夜なら仕事の役に立つと思って葵を捨てて美夜に乗り換えた。
そんなのよくある話だ。
しかし美夜は、堅実な性格で葵のような尽くし方はしない女だった。
しかも、初めてだった日は仕方ないとしてもその後もSEXには乗り気にならない女だ。
沙耶香と出会って自分は、下手ではなく美夜が悪いと金子は思った。
金子が成績に困っていても話を聞くだけで何もしょうとはせずに逆に自分は、大きな企画を成功させた。
あんな大きなプロジェクトを進めていると知っていたらヘッドハンティングに乗らずに美夜を丸め込んで自分もその企画に参加した嫌、自分の企画として発表できたのにと思うと口惜しい限りだった。
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