第七章

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金曜日がこんなに楽しみになるとは思わなかった。 彼からの「金曜には行くよ。」というラインを眺めながら自分は、一人じゃないという事を最近実感している。 平日は、お互い時間が合わずにすれ違うけれど不安にならないのは、寝る前に彼が連絡をくれるからだ。 一時間程度の会話だけど今日あった出来事を報告したら彼は黙って聞いてくれる。 「おやすみ。」 「おやすみなさい。」 そのやり取りが嬉しいなんて高校生のようだと、自分でも思うが金子の時には無かった時間だった。 金曜日には、早く帰り食事を作って彼を迎えたいなんて思っていたのにまた残業になってしまった。 一時間ほどの残業だったから、それほど遅い時間ではないが自宅で食事を作る時間は無いと思った美夜は、近くの店でデリを購入して確か冷蔵庫には、サラダくらいは作れる材料があったと思い出しながら歩いていた。 彼との交際は、一か月にも満たないけれど美夜は充実していたし何より心も体も満たされていた。 金子のとの交際の時には、仕事の話や彼の愚痴しか会話しか無かった記憶しか無い、今のような甘い時間など無かった。 それは自分にも問題があったのかも知れないが、金子が初めての相手だったから比較対象が無かったから世の中の恋人は、みんなあの苦痛を何故好んで体を重ねるのか美夜には理解出来なかったが、今なら理解出来る。 キョウと金子を比較するのは気が引けるが、どうしても比べてしまってキョウが異常に上手いのか金子が下手なのかは分からないけれどキョウとの夜は、何時もただ快楽に溺れそうになるだけでなく気持ちまで満たされる。 今までに感じた事がない「愛されている」という感覚を感じていた。 会えない日も幸せで会える日はもっと幸せだと、思う自分にクスっと笑ってしまった。 週末は、幸せなの時間を二人でまた過ごせるのかと思うと自然と顔が綻んでしまう。 「何か楽しい事でもありましたか?」 「えっ?」と振り向くとそこには見た事のある男性がいた。 彼も同じ店でデリを購入したのか同じ店の名前が入った袋を持っていた。 「ええーっと。」 「ああ、僕は鏡ホールディングスの宇佐美です。」 確か以前声をかけてきた男性だと思い出した。その時も名前を聞いた記憶はあるが、仕事に関わらない事と興味が無い事を覚えていない。 自分はこの男に興味が無いから無意識に名前を記憶していなかった。 「ああ、失礼しました以前も聞いていましたよね。」 名乗ったのに忘れられているなんて、彼のようなプライドの高そうな人には失礼だと思われるか、機嫌を損ねられるかもしれない。 そう思った美夜はなんとなく謝罪した。
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