第七章

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しかし、彼は美夜が心配するような事はなく穏やかに笑いながら「ここのお店美味しいですよね。」と何でもない顔をしながらお店の話をしだした。 「ええ、少し高いですけど。」 この店は、素材にこだわっているからか、2割ほど高い気もするが美夜は、ここのハンバーグと付け合わせの温野菜が好きだった。 「堅実なんですね。ホストクラブで遊ぶ女性には見えない。」 急に話を変えてきた彼の真意を測りかねたが美夜は顔色をかえずに 「人生で2回ほど経験してみました。」 と答えた。 「二回ですか・・。」 「ええ、恥ずかしい話少し前に。」 「あの・・少し聞いても良いですか?貴女はこの彼女を知ってますか?」 宇佐美は可愛い女の子の写真を一枚美夜に見せた。 「いいえ。会った事も見た事もないですが?どちら様でしょうか?」 「橋田葵といいます。見た事は?」 「無いです。」 宇佐美は顔色を変えてはないが、慎重に美夜を観察するかの様に写真の女性を知っているか?と聞いて来た。美夜は、本当に知らなかったから知らないとしか答えられなかった。 「そうですか・・やはりそうですか。」 「彼女は?」 「いえ、知らないならこれ以上は聞かない方がいいです。あ、それと今お付き合いしている彼がいますよね、彼の本当の名前が増田恭介だと貴女は知っていますか?」 「いいえ。聞いてませんでしたから。」 「そうですか、彼は鏡ホールディングスの経理にいます。」 キョウが隣の会社で経理として働いているなんて初耳だったし、あえて何も聞いていなかったから・・・。 「経理の彼がホストだったのには僕もビックリしましたが、そんなミステリアスで裏表がある男性と平気で貴女は付き合えるのですね。」 ここに来て彼が、自分に何が言いたいのかつかめずにいた美夜だった。 「私からすれば貴方もミステリアスですよ。彼は、私に嘘はついてませんし私が聞かなかっただけです。」 これも美夜にすれば嘘ではないしそれ以上に目の前にいる宇佐美の方が悪意とまでは行かないまでも、どこか恐怖を感じていた。 「では失礼します。」 と美夜は足早にタクシーを捕まえてマンションへ帰る事にした。 残された宇佐美はスマホをタップして・・・ 「兄さん。彼女は葵を知らないみたいだ。」 と自分の兄に電話をかけて言ったが兄は直接聞かないと解らないとだけ言って電話を切った。 直接彼女と話をしてみて彼女が、それほど悪い人間には思えなかったし、妹の事を知らないと言った言葉に嘘は無いように思えた。 今回のホスト騒ぎや社内の噂を聞いた兄は、彼女が葵の存在を知っていたのに金子を誘惑した悪女だと思っている。 違うと言ってみたが兄は、彼女に直接聞いて判断したいのだろう。 しかし、それはあまり勧められた事ではない。 増田恭介がキョウと同一人物だと言っても彼女は少し驚いた顔をしただけで「自分が聞かなかったから。」と彼を擁護するわけでもなく何でもない事だと言う感じだった。
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