第二章

2/6
前へ
/71ページ
次へ
昨日の夜はマンションへ帰りコンタクトを外してシャワーを浴びてすぐにベッドで眠ってしまった。 こんな時は、増田 恭介としてのキャラは面倒がなくていい。 ボサボサの頭で自社の社販で買ったスーツを着て時計はしないしスマホがあれば十分で靴も安い物で良くて、定時に間に合うように出社し自分のディスクに座るだけだ。 「おはよう」 「おはようございます。」 同じ経理課の彼女は、社内の情報通で有名な子で綾瀬円佳さんという。噂話のデパートのような子で社内の噂で知らない事は無いと言う子だ。 「増田さん知ってます?」 ほら始まった・・・噂を仕入れたら話さずにいれないタイプで真偽はどうでもいいらしいが、不思議に彼女は、ほぼ正しい情報を手に入れてくる。 「何がですか?」 「営業に来た金子さんですよ!」 「金子さん?誰ですそれ。」 「増田さんは知らないかもしれないですね。隣の営業のトップセールスマンでうちの社長が気に入ってハンティングした彼ですよ。」 綾瀬は、興奮気味で話をしてるが何がそこまで彼女を興奮させているのだろうかという事には興味がある。 「何かあったのですか?」 「よく聞いてくれました。彼は社長の無茶ぶりテストに残念ながら不合格で課長になれなかったけど彼が受付のお嬢さまを射止めたらしいですよ。」 あーその話かどうでもいい話だと俺は思ったが愛想笑いしながら聞き流す。 「受付のお嬢さまですか?」 「ええ、ほら社長の息子さん狙いで入社したのに息子さんは、会社にも入社していないじゃないですか、噂では海外を放浪しているとかで。一条 沙耶香さんは、銀行の頭取のお嬢さまですごい美人なんですよそれで、その高嶺の花の彼女を落としたのが金子直樹さんみたいです。」 いや、その息子ここにいますけどね・・・。 「息子さんじゃなくても良かったんですね・・金子さんイケメンなんですね。」 俺がそう言うと彼女は、自分の好みではないけどモテるタイプだと思うと言った。 「それもですね、お隣の女主任を振って乗り換えたというから驚きですよね。」 何故驚くんだろうと話を聞いていると・・。 「隣の主任さんはホント仕事が出来て綺麗な人なんです、少し冷たい感じはしますけど。」 彼女は確かに綺麗な人だったよ・・媚びない所とかが冷たいと言われるのだろうか? 「私から見ると隣の主任さんの方が美人だとは思いますけどね、お嬢さまはお金かけてます~ってな感じの美人だけど、主任さんはあれ天然で美人って感じです。」 「美人って好みだからね~さっ仕事してしまおうか。」 噂話はここまでという感じで伝票を整理したものをパソコンに入力する。 俺は、一度親父である社長に金子直樹について聞きたいと思ったから 「あれ?この伝票少しおかしいから上に聞いてくるよ。」 と仕事を装ってその場を離れる。 経理部の部長は、俺が社長の息子だと知っている数少ない人だから何も言わない。 最上階の社長室をノックして俺は「どうぞ」という声を聴いてから部屋に入った。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2546人が本棚に入れています
本棚に追加