婚活編

27/31
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
 このところ婚活を休止していた波那の元に、相談所から婚活情報のメールが届く。久し振りに相談所へ足を運ぶと、今回声を掛けたのは、料理が得意な彼には最高のアピールの場になるのではないかという事だった。しかも条件に合いそうな女性が二人ほど参加予定で、三十三歳の外科医、三十六歳の大手出版社勤務の女性の存在を教えてくれた。  それを聞いて参加を決めた波那は意気揚々と会場に入ると一人の美女が混じっていて、彼女が先日説明のあった三十三歳の外科医だった。運良く彼女と同じグループになった波那は、得意分野を生かして誰よりもテキパキと作業をこなしていく。 「お料理お好きなんですね」  早速お目当ての美女が彼の器用さに食い付いてきて、二人は一緒に作業をする。波那は普段通り慣れた手つきで作業を続けながらも美女の視線を気にしていた。 「名前まだ言ってませんでしたよね? 村岡沙耶果(ムラオカサヤカ)と申します」 「初めまして、小泉波那です」  この人綺麗だな。波那は愛梨以来のときめきを覚え、出版社勤務の女性の事は既にどうでも良くなっていた。この後企画上のシャッフルがあったのだが、フリータイムでも二人は再び一緒になり、滑り出しは上々のようだ。 「村岡さん、包丁の扱いがとてもお上手ですね」 「仕事でメスを使い慣れているせいでしょうか、こういうの苦手じゃないんです」  二人はそんな話をしながら和やかな時間を過ごし、会話が弾んで理想の結婚像に話が及ぶ。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!